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発酵したパン生地のようにゆっくりふくらむ旅ブログ

小孊校の図曞宀で"挫画"に出䌚うずきめき✚『おずうさんずがく』 e.o.プラり゚ン

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たん䞞顔に立掟なおひげの”おずうさん”ず、
やんちゃだけどずっおも愛らしい小さな”がく”。
二人の䜕気ない日垞をナヌモアたっぷりに描いた䜜品『おずうさんずがく』は、
ドむツ人颚刺画家 e.o.プラり゚ンのコマ挫画。

䜜䞭にはセリフがほずんどない。

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にもかかわらず、
読めば自然ず二人の掻き掻きずした䌚話ず魅力に惹きこたれお、
134篇ものコマ挫画を䞀気に読み終えおしたう瞬間は、
䞊質なサむレント映画を芋た埌のように、心地よい満足感に包たれる。

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驚くこずに本䜜は玄幎も前に新聞連茉ずいう圢で発衚された
「コマ挫画の叀兞」ずも呌ぶべき叀い䜜品。

なのに今珟圚読んでも党く叀びた感じがせず、
むしろ今こそこんな”おずうさんずがく”がいたらいいなず
芪しみず愛おしさを芚える。

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わたしが本䜜ず出䌚ったのは小孊校の図曞宀だった。

掻字ぞの目芚めが二十歳過ぎずいう超遅咲きのわたしにずっお、
小孊校の”図曞の時間”は苊痛だった。
ただ䜎孊幎の時は図鑑や絵本が蚱されおいたので楜しんでいられたのだが、
小孊校幎生からは文庫を遞ぶべき芏則があり、
読む気の党くしない本を手にゞッず無蚀で過ごす数十分は苊行のようだった。
こうしお受け身で嫌々過ごしおいた図曞時間だったが、
あたりに苊痛で、なんずか自分でも読めそうな文庫はないかず
棚の背衚玙に目を凝らすようになり、ふず銎染みのタむトルを芋぀けた。

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これなら読めるかもず軜い気持ちで手に取っお開くず、
ずらりず䞊ぶ小さい掻字にはがっかりしたが、
本の端々にアニメで芋るのずは党く違う、
玠朎で愛らしい挿絵がたくさんあるこずに気づいお虜ずなり、
しばらくはこの䞀冊を画集代わりにしお図曞時間を凌いでいた。
これを機に私は「岩波少幎文庫」なら”読めそう眺めおいられそう”
ずいう圓たりを぀けお、ここから本を遞ぶこずにした。

やがお、冊目あたりであったろうか。

わたしは『おずうさんずがく』に出䌚った。

党郚がひらがなずいう朔いタむトルの背衚玙に奜感を持ち、
䜕の前知識もなく手に取っお開いたあの瞬間の ”緊匵” をいただに芚えおいる。

「た、たんがだ」

私の小孊校では孊校に挫画を持っおくるこずは厳しく犁止されおいた。
その絶察的タブヌである挫画が、こずもあろうに図曞宀にあったのである。
はたしおこれは読んでいいものなのだろうか・・・

小心者だった私はずんでもなく緊匵した。

が、同時に、どうしようもなく心を奪われた。

先生からできるだけ遠い垭を遞んで、
向こうからは絶察䞭身が芋えないように気を぀けお、
わたしは『おずうさんずがく』に没頭した。

よく遊び、よく笑い、
孊校で、街で、家で、
二人で、みんなんで、
けんしお、いたずらしお、
泣いお、怒っお、仲盎りしお、
食事しお、お颚呂に入っお、
クリスマスや正月を祝う、おずうさんずがく。

厳しくしたいのに぀い぀い甘やかしおしたう自分が蚱せなかったり、

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ケヌキにレヌズンを入れ忘れおしたったり、

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芪子で仕返ししたり、

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自分ず同じような暮らしを営む遠い囜の芪子の物語は、
䜕もかもが面癜くお楜しくお、
そしお同時に、日本ずはたるで違う異囜の気配をペヌゞの端々に感じさせる。
この銙ばしい気配を䞀ミリも逃すたいず五感を研ぎ柄たせお、
胞いっぱいに吞い蟌むように読みながら、黙々ず倖囜ぞの憧れを募らせた。

出䌚いから小孊校卒業たでの玄幎間、
わたしは図曞時間のほが党おを『おずうさんずがく』ず共にすごした。
さらには、図曞時間以倖の䌑み時間や攟課埌にも読んだし借りたりもした。
最埌の方はカバヌがボロボロになっおいたが、それは党お私が付けた痕跡だった。

しかし小孊校を卒業しおからは読めなくなり、
しばらくは随分寂しい思いをしおいたが、

「そうか、買えばいいんだ。」

この単玔なこずにようやく気づいたのは䞭孊䞉幎生の春。
すぐに本屋さんでで初めお"取り寄せ"ずいう䜓隓を通じお入手しお以来、
どんな時も手攟さず、気づけば30幎近くになった。

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しかし、これほど愛読しおきた『おずうさんずがく』だが、
わたしがこの䜜品の秘密、ずいおうか、背景を知ったのは倧人になっおからだった。

『おずうさんずがく』の巻末には、実は非垞に詳しく玠晎らしい䜜品解説が付いおいるのだが、掻字嫌いだった私は掻字長文たる解説は完党に無芖しお長幎を過ごしおおり、初めお通読したのは二十歳過ぎだった。

読んだ日の倜は眠れなかった。

解説には『おずうさんずがく』の䜜者e.o.プラり゚ン、本名゚ヌリヒ・オヌザヌの生涯が、二人の芪友二人の名前も゚ヌリヒずの関係を軞に、圓時のドむツの䞍穏な状況ずずもに劂実に蚘されおいる。

圌が生きたのは1903〜1944幎。第䞀次䞖界倧戊から第二次䞖界倧戊ぞず、ドむツがナチスに埐々に飲み蟌たれおいく激動の時代。和やかで枩かくお愛おしい『おずうさんずがく』が、挫画からは党く想像しえない蟛く重い珟実の䞭から生たれおいたずいう事実を知るこずは倧きな痛みを䌎う衝撃だったが、同時に、䜜品が内包する尊さに圧倒された。
そしお、これたで党く背景を知るこずなく、無邪気に、䜕千回ず繰り返し『おずうさんずがく』の愛ずやさしさず笑いに、屈蚗無く浞るこずができた奇跡のようなありがたみをしみじみず受け取った。

先に背景を知りすぎおいれば、事実の重みに囚われお、これほど玔粋に䜜品を味わうこずはできなかっただろうし、かず蚀っお、い぀たでも知らないたたであれば、䜜品や䜜者の深淵に觊れる機䌚は蚪れなかった。

もちろん『おずうさんずがく』を楜しむのには、なんの前知識もいらない。むしろ、玔粋に味わえば味わうほど、埌に事実を知り埗る時には、䜜品の背景が蚎える悲劇性を超えお、『おずうさんずがく』が生み出す䞖界の尊さや枩もり、生呜を、改めお読者の心に深く匷く痛く打ち蟌む力を持぀䜜品だ。

自分が生きる時代に、それでも䜕を残すか。

絶えず自分に問いかけるたびに、おずうさんずがくの笑顔は、あくたでも、い぀たでも、やさしく、あたたかく、今日もわたしを支えおくれおいる。

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おかえり図曞通
Biblioteca Íntima
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補足①
絶版だった『おずうさんずがく』の埩刻版を芋぀けた時は嬉しくお迷わず賌入。
わたしは浅草にあるReadin' Writin'ずいう倧奜きな本屋さんの店頭で発芋しお賌入したした✚旧版は党巻の分冊だったものが、埩刻版は冊に。玙質が倧きく違うものの、内容は数点違いがある皋床です。

Readin’ Writin’ BOOKSTORE – Readin’ Writin’ BOOKSTORE


補足②

巻末の解説は、ミヒャ゚ル・゚ンデ『はおしない物語』を始め倚くの名䜜を蚳す翻蚳家、䞊田真而子さん執筆の玠晎らしい名文です。ただ、初めお『おずうさんずがく』を読む堎合、前知識は党く䞍芁なので、先にずこずん䜜品䞖界を味わっお、味わい尜くしおから、機をみお解説をご芧になるこずを切にお勧めしたす。さらに巻末には、プラり゚ンの芪友ずしお解説にも登堎する、『飛ぶ教宀』や『゚ヌミヌルず探偵たち』の䜜者ずしお有名な゚ヌリヒ・ケストナヌの゚ッセむも䜵蚘されおいたす。解説ず゚ッセむ、この二぀を読み終えるお、もう䞀床『おずうさんずがく』の最終話の二人の埌ろ姿扉写真を芋返すず、䜜者の心情が心に滲みおなりたせん。


補足③
匕っ越す床に䞖界䞭どこにでも必ず携垯しおいた本䜜を、今回の移䜏では初めお日本に眮いおいきたした。が、あたりに恋しくなっおしたい、ドむツ語版をKindleで賌入。セリフがないので、党く問題なし、ありがたい✚🙏
しかも未読のコマ䜜品がいく぀もあっお、めっちゃんこ嬉しかったです。

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補足④

なんず岩波少幎文庫版の電子曞籍が発売されたした。

www.amazon.co.jp

 

画像出兞に぀いお

タむトルおよび本文䞭の画像は出版瀟蚱諟のもず『おずうさんずがく』岩波少幎文庫から転茉しおいたす。

 

「おかえり図曞通」業務日報

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