✨🌈 CHINOちのたびTABI ✨🌈

発酵したパン生地のようにゆっくりふくらむ旅ブログ

クロアチアで初のラベンダー収穫

2019年7月のおはなし。

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いつもお世話になっているイベック&ナンシーに誘われて、
人生初のラベンダー刈りに行って来ました。

場所はザグレブから北に車で1時間、スロベニア国境に近いザゴリエ地方。

けっこうキツい作業だけど本当に来る?と聞かれたものの、
クロアチアの山奥でラベンダーを刈るなんて、
ふだんのひきこもりが帳消しになるようなイベントに、
胸躍らせて迎えの車に乗り込みました。

車窓からはザ・ヨーロッパなイメージそのままの農村が続き、逸る心を盛り上げます。
とはいえ、行けども行けども見渡す限りはとうもろこし畑で、
ラベンダー畑はどこにも見かけないまま目的地に到着。
訪問先の典型的な煉瓦造りの農家の周りも、あるのはとうもろこし畑のみ。
そういえば、ラベンダーはアドリア海の特産のはず。
こんなところに畑があるのか?と少々疑い始めたものの、
この家の裏手に回ってみると・・・

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おおお〜

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突如目の前にこんもりと薄くかすむ紫色の畑が広がり、
風にラベンダーが香ってきました。

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農園の管理者の1人、バネッサちゃんとご挨拶。
今回私を誘ってくれたナンシーさんはコロンビア出身で、
クロアチア人のイベックさんとの結婚を機にザグレブに移住した人。

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さて、納屋に案内され、各自道具を手に取ります。

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ラベンダーは全てこの鎌で、手作業で刈るのです。
じわじわ燃えてきます。

あ、でもその前に。

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まずはガソリン注入!ということで、
ワイン、ビール、
そして近所の農家自家製の”くるみリキュール”を
皆さま、飲むわ飲むわ。
朝8:30、これから労働、その前に・・・
ラテンの人も、クロアチアの人も本当お酒に強い。

お酒が飲めない私もくるみリキュールを一口味見。うまし!

ということで、
ようやく、いざ、出陣。

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畑ではすでに最強助っ人集団「ご近所のプロ農家の皆さま」が作業中。

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私たちは、まずはこの1列制覇を目指します。

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いざ、
1束掴んで、
根元に鎌をザクっとな。

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獲れました、初刈り取り。
(の前に手のひらをサックリ切ったのは内緒・・・)

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収穫は麻袋に。
いつも嗅いでいるラベンダーの匂いとは全然違い、
ツンと青臭くフレッシュな匂いが立ち上ります。
葉の形も、匂いも、ローズマリーに似てるかな。

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基本は1列につき2人1組で、
同じ株を2人同時に左右から刈り込んで進むそうですが、
夫と私が同じ株を刈っていたらお互いを切り刻むことになるに決まってるので、
少しずれて進むことに。たぶんこれは大正解。

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ラクターのスピーカーからは、
ゴリエ地方の民謡が畑一面高らかに流れています。
農家さんたちは、
しゃべりながら、大笑いしながら、歌いながら、
サクサクとサクサクと進みます。
その刈り取りの速いこと。
歌いながら、笑いながら、あっという間に、
どんどん先へ進みます。

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畑に似合わない服が悔やまれますが、
とにかく黙々と作業する真面目な私も一枚。

時は7月末。花は盛りをすぎて、少し枯れているような状態。
これがラベンダーの刈りどきらしいです。
植わってる土もかなり乾燥していて、土埃もよく立ちます。

ところで、
鎌がよく切れるので、ラベンダーを刈る力は思いのほか軽く済みましたが、
何が大変って、踏ん張る力!
一見緩やかに見える斜面での作業が、
これほど足腰に負担がかかるものとは知りませんでした。

1時間で8株ほど進んだところに、「朝ごはんだよ〜〜〜〜」の天の声。

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生ハム、パン、卵、クリームチーズに生ベーコン。
全て当たり前の自家製。
うまし!
特にぷにぷにした生ハムの厚切りがとんでもなく美味しくて、
既に疲労で、食欲が失せていたのが嘘のように、
気づけばぺろぺろっと7枚ぺろり。

ポリタンクで出てきた白ワインも自家製とのこと。
クロアチアの内陸部では白ワインを炭酸水で割って飲むのが主流らしく、
皆さまは水のようにグビグビ飲んでいました。

これはクロアチア語でゲミシュットゥ(Gemišt)と呼ばれる飲み方で、
ザグレブで白ワインを注文すると「炭酸水も必要か?」と聞かれることが多いです。

1時間ほどまったりと食べて飲んで、
すっかり立つ気を無くしたラテン系(筆者込み)を横目に、
さっと作業にもどるザゴリエ農家の皆さま。
私たちもなんとか立ち上がり、続きの作業にかかります。

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だがしかし、
空はますます晴れ渡り、
容赦ないカンカン照りの炎天下。

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なんとか1列刈り終える頃、
暑さに負けた私は芝に倒れこみ、ここでリタイア。
麻袋にして3袋弱、約60キロ分を刈りました。

何リットル水を飲んでも、全て汗でながれていく。
こんな経験は何年振りでしょか。
ちょうどタイミングよく「お昼ごはんよ〜」の天の声。

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豚の丸焼きに、野菜サラダ、豆サラダ、どれも旨し!
キューバのおもてなしメニューとダダ被りなのが妙に嬉しい。
普段あまり食べないキュウリも3本分以上食べました。

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昼食後わたしはゴメンして、
皆さまを眺めながら芝生でシエスタ(昼寝)。
ラベンダーは安眠効果がありますしね・・・

ちなみにラベンダーの効果と言えば…
不器用なわたくしは今朝の刈り取り始めに
サックリと手のひらを鎌で切ってしまい、
2センチ幅の切り傷ができ、しばらく血が滲んでいましたが、
その後の荒い作業や土汚れにもかかわらず、すぐに血は止まり、
昼寝の時には既に綺麗な傷口になっていました。
というわけで、
ラベンダーには止血効果や消毒効果もあるのかな?
としみじみ感じつつ、手をじっとみる。

さて、日陰でしっかり一眠りした後は、
ラベンダーオイルの精製小屋を覗きに行きました。

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ここで少し、この農園のお話を。
クロアチア人のミラン君とコロンビア人のバネッサちゃんという若きカップルが管理するこの畑は、ミラン君のお家が代々受け継いできた農地。

ただ、ここをラベンダー畑にしたのにはつい最近の3年前。

実は今クロアチアでは先祖代々の農地を引き継ぎきれず、空き地となり荒廃してしまう問題が深刻で、一家につき何十、何百エーカーという広大な面積が空き地化する影響は全国的に大きく、例えば、近年急増している都市部の花粉症は、この空き地に生える雑草による花粉が原因じゃないかと言われるほどの規模。ここザゴリエ地方も、元来はクロアチア人が桃源郷のように憧れる地域である反面、過疎化が深刻。

ミラン君一家も、お父さんの代からすでに暮らしの拠点は首都ザグレブになっているそうです。それでも、おじいちゃんのおじいちゃんの、そのまたおじいちゃんから継いだ土地をなんとか大事にできないものか・・・そう考えたミラン君一家が目をつけたのが、農作物よりは手間がかからず、週末の管理で栽培できるラベンダーでした。

ラベンダーは、トリュフやワインと並んんでクロアチアを代表する特産品ですが、産地はアドリア海の沿岸や島に集中しており、この地域での栽培はまったくの初試み。

にもかかわらず、新たな挑戦に惜しみなく力を貸す近隣の農家さん方の姿を見ていて、この地域で代々脈々と気づかれた地域の絆を深く感じました。

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さて、オイル精製小屋を仕切るのはミランのパパ。
丁寧に嬉しそうに説明してくれます。
左のタンクで100度に熱し、蒸留されたラベンダーの水分とオイルが、
右側のタンクに溜まるそうで、

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バケツ側にラベンダー水、
フラスコの奥のビーカーにオイルが溜まる仕組み。

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バケツを持ち上げ、水に触るように促すパパ。
触っていいの?と恐る恐る指先をつけて嗅いでみると、青く爽やかな香り。

すると今度は両手で顔を洗うような仕草をしてから、
おもむろに私のメガネを奪ったパパ。
こっちも思い切って首ごとバケツに入れて、
両手でバシャバシャ洗顔してみましたところ、

むっはぁ〜〜〜〜〜〜〜〜ん・・・


液体なのに未知の感触。
大地の緑を全て溶かし込んだような香りと、
しっとりとは違う、
もっと軽くて、
それでいてじゅわぁ〜っと細胞の奥に染み込むような潤いが
顔の肌の全てに、みずみずしく行き渡ります。
私はアトピー持ちで肌が弱々なのですが、肌への刺激は全くなし。
びっしゃびしゃの顔を上げて感動していると、

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今度はビーカーにたんまり溜まったオイル登場。
アロマオイルの原液を肌につけるのはNGなことが多いと思うのですが、
「このオイルなら大丈夫、すごく肌にいい!」というパパの言葉を信じて、
両手のひらにダブダブと注がれたオイルを、
顔に、腕に、足にと、全身に塗ったっくってみましたところ、
ひたひたと気持ち良さがあふれ…

これまた、むっは〜〜〜〜ん・・・

しばらくすると、
ミントのような、でもミントよりはずっと優しい、
スーっと冷えていくような爽涼感に全身が包まれました。

「Ja sam lavanda!!! ヤー・サム・ラバンダ!」
(もう私自身がラベンダーだよ!)

覚えたてのつたないクロアチア語で感動を伝えたら、
パパはすごく喜んでくれて、
今度このラベンダー水をバケツいっぱいくれると約束してくれました。
バケツ一杯ね、絶対ね、わはは。

ちなみに、ラベンダー50〜60キロ(麻袋3袋くらい)から、
約800ミリリットルのオイルが取れるとのこと。

そして、ラベンダーの栽培の水も、蒸留に使う水も、
全てここで昔から飲用している地下水を使用。
収穫が少量な分、
手作業で、
自分たちが安心していつも使うもので精製する。
それがモットーのラベンダーオイル。

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今日収穫した分は後日精製して、
こんな可愛いパッケージに入って届けてくれるそうです。ありがたき幸せ。

心身ともにラベンダーでほぐされた1日。
翌日は地獄の筋肉痛になりましたが・・・  

colorín colorado✨🌈